トップページ 業務案内 事務所概要 日誌 お問い合わせ English
トップページケーススタディ>外国税額控除を最大限に活用するためのグループ持株会社の活用

外国税額控除を最大限に活用するためのグループ持株会社の活用

(ご注意) 実際の問題に際しては必ず専門家にご相談下さい。

(出典)「グループ会社の経営実務」第一法規出版 平成12年2月25日版 P5661〜5665 執筆:山條隆史

当社の海外展開は事業部毎に子会社を設立する方針を採っており、欧州には事業部毎の子会社が数社あり、また新規の投資案件も各社が自社の子会社を持つ形で展開するため、日本の親会社から見ると曾孫会社や玄孫会社に相当するものまであります。

ところで、日本の間接外国税額控除は孫会社までしか適用にならないと聞いていますが、曾孫以下の会社が負担する外国税額を最大限に控除するための良いアイデアがあったらお教え下さい。

ポイント

(1)日本の間接税額控除は孫会社までしか適用されません。そのため日本からの投資形態は孫会社までに収まるように組織形態を変更する(新規に海外展開する場合は当初から孫会社までにする)必要があります。

(2)日本の親会社における外国税額控除のみならず、海外の子会社での外国税額控除制度も考慮に入れた上で、グループ全体での外国税額控除が最大限になるように留意します。

(3)源泉税の軽減は軽視できません。例えば、外国税額控除限度額による控除額の頭打ちがあったり、また国によっては外国税額控除を認めず外国税額控除を損金としてしか認めない場合があるため、完全には取り戻しができないこともあるからです。

1.日本の多国籍企業における国際展開形態の特徴

日本の企業は、いわゆる事業部制の縦割りが横行し、国際事業展開するに際しても、各事業部ごとにばらばらに現地に販売子会社や製造会社を設立し、国によってはひとつの日本の親会社で4つも5つも子会社を保有している例も見受けられます。

また、日本企業の投資の形態として子会社を設立する方式が多いため、必然的に子会社群が多層化され、日本の親会社から見ると、ひ孫会社や玄孫会社又はそれ以下の子会社といったものまで抱えている場合もあります。

ところで、日本の外国税額控除の対象となるのは孫会社(2層下)までです。そのため、ひ孫会社(3層下)以下の会社が負担した外国法人税額は日本の親会社では外国税額控除の対象とされず、国際的二重課税で調整されない部分が発生します。

日本からの投資形態を考える場合、ビジネス上の必然性を捨象し、純粋に税金の観点からのみ考えると、組織形態は孫会社までに収まるようなフラットな形態が望ましいといえます。

2.外国税額控除を最大限に受けるための持株会社の活用

日本の間接外国税額控除は孫会社までしか受けられませんので、海外展開は孫会社までの投資形態とします。

具体的には、海外展開の地域的本部たる持株会社を設立し、そこから各国に子会社を設立します。投資は原則としてこの持株会社から行い、本社の各事業部から分散的に行うことは避けるようにします。

ここで、持株会社を活用することのメリット、とりわけ様々な活用価値のある欧州持株会社について考えてみます。

1.ヨーロッパ持株会社を持つことで税務上の利益を得る

欧州の子会社から日本の親会社への配当の支払いに際しては、通常5〜15%程度の源泉税が課されます。一方、EC国間での配当については、ECの親子会社指令等により、源泉税を非課税としている国が多くあります。

そのため、欧州に持株会社を持つことで送金(配当)の際の源泉税を減らし、日本へ送金する際のコストを減らすことができます。

すなわち、日本の親会社と欧州子会社との間に中間持株会社を置くことで子会社から親会社へ送金する際の配当の源泉税を軽減させます。

源泉税は時として「外国税額控除の対象となるから高くても低くても同じ」と軽視されがちですが、例えば、外国税額控除限度額による控除額の頭打ちがあったり、また国によっては外国税額控除を認めず外国税額控除を損金としてしか認めない場合があるため、完全には取り戻しができない場合があるという意味で源泉税の軽減は軽視できません。

また、欧州持株会社に資金を貯めておくことで、日本で高率の法人税負担を受けずにヨーロッパ内の資金移動ができ、次へ有効に再投資できます。

さらに子会社(日本の親会社から見て孫会社)を売却する際のキャピタル・ゲイン(売却益)に対する税金の節減に大きく貢献することになります。

2.源泉所得税を小さくするための持株会社の設立

日本と租税条約を締結していない国からの配当に際しては、その国の国内法の規定(非居住者に対する配当にかかる源泉税の規定)により源泉税が課されます。この税率は、租税条約を結んでいる場合に比べ、概ね高い税率となっています。

例えば、現在ポルトガルから日本への配当に対しては30%の源泉税がかかります。この配当をオランダもしくはベルギーの持株会社に移すことにより14.5%まで源泉税を下げることができます。(下図参照)

3.海外子会社所在国の外国税額控除制度

海外子会社の展開形態は、上述のように、孫会社までに収まるようなフラットな形態が望ましいのですが、ビジネス上の理由からひ孫会社以下の会社の子会社群を抱えざるを得ないというのが現実です。

こういった場合には、子会社以下の外国会社でいかに国際的二重課税を少なくするか、言い換えれば、いかに二重課税の調整がうまくいくようなスキームを構築しておくかが大切になってきます。

そのためには、各国における外国子会社からの配当にかかわる国際的二重課税の調整方法を十分に検討する必要があります。

日本のように外国税額控除方式によっている国(アメリカ、イギリス)、外国子会社からの受取配当を所定の条件付きで非課税としている国(フランス、ドイツ)、資本参加免税により税金が免除される国(オランダ)と各国により規定は異なります。

また、各国の国内法の規定次第で控除額の範囲が変わってきますし、租税条約上の取り決めで諸条件が緩和されている場合もありますので、海外子会社所在国の税制と親子会社が所在する国間の租税条約を勘案しながら、国際的二重課税の調整が最適に行えるようなスキームにすることが望まれます。