
(ご注意) 実際の問題に際しては必ず専門家にご相談下さい。
(出典)「グループ会社の経営実務」第一法規出版 平成12年2月25日版 P5661〜5665 執筆:山條隆史
当社はアジア某国にグループの製造拠点を持っています。ところで、発展途上国に子会社を持ちそこから配当やロイヤルティ収入がある場合、「実際には納付していない外国の税金でも納付したものとみなして日本の納税額から差し引くことができる制度がある」ということを聞いたことがありますが、本当でしょうか。
もしそういった制度があれば、そのしくみと規定の適用のために必要な要件について教えて下さい。
ポイント
(1)開発途上国が政策上導入している各種の税制上の減免措置を阻害しないよう、「開発途上国での租税減免措置等により実際は納付されていない外国の所得税も、納付したものとみなして外国税額控除できる」という租税条約で採用されている制度を「みなし外国税額控除(タックス・スペアリング・クレジット)」といいます。
(2)日本は、現在、このようなタックス・スペアリングを、19カ国との租税条約において設けています。ただし、近年の新規条約締結や条約改定において、みなし外国税額控除は経過期限を設けて廃止される傾向にあります。
(3)みなし外国税額控除は、通常の外国税額控除制度に取り込まれて、法人税の申告を通じて控除されます。申告書の添付書類として、当該税額がみなし外国税額として控除適格であるという証明書類等が必要です。
1.みなし外国税額控除
「みなし外国税額控除(タックス・スペアリング・クレジット)」とは、「開発途上国での租税減免措置等により実際は納付されていない外国の所得税も、納付したものとみなして外国税額控除できる」という、租税条約で採用されている制度をいいます。
日本は、現在、「みなし外国税額控除(タックス・スペアリング・クレジット)」を、19カ国(アイルランド、インド、インドネシア、韓国、ザンビア、シンガポール、スペイン、スリランカ、タイ、中国、トルコ、バングラデシュ、パキスタン、フィリピン、ブラジル、ブルガリア、ベトナム、マレーシア、メキシコ)との租税条約において設けています。
ただし、近年の新規条約締結や条約改定においてみなし外国税額控除は経過期限を設けて廃止される傾向にあり、次の国々とのみなし外国税額控除はそれぞれカッコ内の日をもって廃止されることになっています。
シンガポール(2000年12月31日)、韓国(2003年12月31日)、トルコ(2004年12月31日)、ブルガリア(2001年12月31日)、ベトナム(2010年12月31日)、メキシコ(2005年12月31日)、マレーシア(2006年12月31日)。
2.みなし外国税額控除の適用
1.みなし直接外国税額控除
みなし外国税額控除は、源泉地国で減免された税金につき、納付したものとみなして居住地国での外国税額控除を認めようとするものです。
利子・配当・使用料(ロイヤルティ)の支払いに際して、本来であれば国内法で例えば20%の税率で課税されるべきところを、租税条約や当該国の特別法(経済拡大奨励(所得税免除)法や外資導入法など)で10%やゼロ%等に減免されている場合に、本来の税額と実納税額との差額につき、納付したものとみなして外国税額控除が認められます。
なお、租税条約によっては、国内法の規定にかかわらず、常に一定の税率で納付したものとみなして、実際納付税額との差額をみなし外国税額控除の対象とすることになっているものもありますが、こういった制度はいわゆる「固定スペアリング」と呼ばれています。
2.みなし間接外国税額控除
みなし外国税額控除は外国子会社の外国法人税にかかわる間接税額控除の場合にも適用があります。
外国子会社の法人税が現地国での特別法で減免されていてその減免後の所得から配当があった場合、その配当が負担したものとみなされた税額(減免額)をみなし間接税額控除の対象とすることができます。
3.みなし外国税額控除の計算と申告書の記載
1. みなし外国税額控除の計算
(1) 控除適用時期
みなし外国税額控除の控除適用時期は、その減免が確定した時と考えます。
そのため、申告納税方式の場合は申告の日が、また賦課決定方式の場合は賦課決定通知書に減免税額が記載されて通知された日が減免確定の日となります。
源泉徴収方式の場合は、源泉徴収の対象となる利子・配当・使用料(ロイヤルティ)の支払日に減免が確定したものとされます。
(2) 控除できる外国税額の計算
基本的には、通常の外国税額控除計算の規定に従って控除できる外国税額が計算されます。ただし、みなし外国税額は益金に加算しないこと、および、非課税国外源泉所得の3分の2控除は適用されない点に留意が必要です。
2.申告と添付書類
みなし外国税額控除の適用を受けるためには、確定申告署に所定の記載を行うとともに、書類の添付も必要です。
(1) 申告書の記載
申告書では、別表六(四)「直接納付した控除対象外国法人税額に関する明細書」および別表六(五)「間接納付した控除対象外国法人税額等の計算に関する明細書」に記載され、みなし納付に関する欄で計算されます。
そして別表六(四)や(五)で計算された金額が、別表六(二の二)「当期の控除対象外国法人税額に関する明細書」にまとめられ、当期の控除対象外国法人税額が計算されます。
(2) 添付書類
添付書類としては、その課された税がみなし外国税額控除の適用を受けることができる旨の説明や、控除金額の計算に関する明細の書類等が必要となります。
添付書類を作成するには現地国での特別法や税法の規定の知識も必要であり、日本からだけの対応では限界がありますので、現地国の税務アドバイザーに支援を求めることが必要となります。
4.みなし外国税額控除廃止への対応
みなし外国税額控除の廃止は、通常、経過期間を設けて適用が廃止されます。
新条約の発効や現条約の廃止についての具体的な適用関係は条約や交換公文等に明記されますが、相手先国の国内法を知っていなければ、適用を誤る場合もあります。
そのため、みなし外国税額控除を適用期限内に最大限に受けるためには、日本および相手先国の税務顧問と綿密に連絡を取り合いながら手続きを進めることをお勧めします。
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